お金の流れが変わった!

レビュープラスさんから献本頂いたので読んでみた。


「はじめに」の掴みが良い。

 ふりかえれば、この十年、アメリカの地に一度しか足を踏み入れていないようだ。正確にいえば、空港には何度か降り立っている。しかしそれば、中南米諸国に向かうための乗り継ぎ地として、文字どおり足を踏み入れたにすぎない。アメリカをめざして日本を発ったのは、そのうちたったの一回限りである。
 マサチューセッツ工科大学(MIT)大学院の博士課程を終了、マッキンゼーに23年間奉職し、スタンフォード大学カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院の教授も務めた私が訪米した回数は、人生で400回を下らない。全米50州のうち、じつに49州を訪れている。そんな私の足が、アメリカから完全に遠ざかってしまったのである。

これが表すように、
「世界ではアメリカ・中国というG2の時代が始まっていたが、両国の力が徐々に翳りを見せ、新興国へマネーが流れる多極化の時代になってきた」
というのが本書の内容。正直なところ、知っている内容がほとんどだったのだけど…。
リーマンショック以前の世界的なカネ余り現象、それに伴いサブプライムローンへ資金が流入し、アメリカの不動産バブルが起きたこと、そのバブルが崩壊し、EUに大きな影響が出たこと…などが解説されている。サブプライム問題からEUの金融不安まで、流れがよく分かっていない人は読むと良いかも。


中国についての記述で、面白かったところを抜粋。

■中国の賃金水準は上昇
中国政府が、「労働者の給料を毎年15%ずつ上げる政策を採った」のち、フォックスコンの自殺者多発→賃上げがあり、

この「ホンハイ・ショック」と時を同じくして、中国政府は愚かにもにも所得倍増計画を打ち出した。こうなると、賃上げ要求は止まるところを知らない。
 結果、現在の中国の人件費はヴェトナムの3倍、ミャンマーの10倍くらいに跳ね上がってしまった。これではヨーロッパの企業はわざわざ中国で生産しなくても、ルーマニアやトルコでつくっても変わらないことになる。

という流れを辿った。しかし共産党主導で一気に内需振興を図り、GDP成長率の目標値8%を維持できている。


■旺盛な内需

中国人の計り知れない消費意欲と、ケタ違いの内需の規模を示す一例が高速道路。日本が戦後建設してきた高速道路をすべて(いま予定されている部分も含めて)足すと1万3,000キロメートルになる。じつはこれとほぼ同じ距離を、中国は毎年つくっているのである。


人件費高騰とは聞いていたけど、ベトナムミャンマーとここまで違うとは。気に入っているスーツブランドのワイシャツが"MADE IN MYANMAR"で少し驚いていたんだけど、確かにそこまで賃金水準が違えばそちらに行くな。
前から言われているけど、中国は、世界の工場から、世界の消費地へ。